『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』

ベンジャミン・バトン 数奇な人生 [DVD]

ベンジャミン・バトン 数奇な人生 [DVD]

エンドクレジットで知りましたが、これはフィッツジェラルドの小説がモチーフになってるんですね。
それで納得。確かに、このちょっとひねった発想はフィッツジェラルドらしいと思いました。

年老いた状態で生まれ、年とともに若返っていく男という設定をどう表現するのかと思っていましたが、日常の非日常をとても上手く描いていました。みんな、「あなたって年を追うごとに若くなるのね」と少し不思議がりながら、結構受け入れちゃってるんですね。新聞記者が家におしかけて大スキャンダル、みたいな流れにならないところがほっとしました。そうは見えないけど、ファンタジー映画なんだろうな、これ。

ベンジャミンはいわば「時間を盗んでいる」わけですが、そういう彼と接することによって、周囲の普通の人たちが時間に対してどういう想いを抱いているかが分かっていきます。時間なんて、酔っているうちに過ぎていくものだと思う人もいる。時間は過ぎていくけれど、それを愛おしむことを知っている人がいる。時間を巻き戻して、若い時代にできなかったことを成し遂げる人もいる。時間が経っても変わらない、揺るぎない何かがあると信じている人がいる。時間なんて観念は、最初からまったく問題にしない人もいる。

時間ということをどう捉えているかは人によって違いますが、この映画の中では時間と優しく寄り添っている人が多かったので、私には合っていました。
ベンジャミンがどんどん若返り、少年になっていくにつれ、過去を忘れていくのもよかった。
そのまま覚えていたら辛かっただろうと思うから。ちょっと「アルジャーノン」みたいですね。
そして赤ちゃんになり、愛する人の腕の中で死ねたというのも、幸せな最期だと思います。これはまぁ、ボーナスかな。

デイジーの入院している病院があるニューオリンズが、ハリケーンに襲われていくラストシーンも象徴的でした。なるほど、そこと結びつけるとは、って。