『ONCE ダブリンの街角で』

ONCE ダブリンの街角で [DVD]

ONCE ダブリンの街角で [DVD]

全編に流れる音楽があまり好みではなかったのでのめり込むほどではありませんでした。でも、よい映画でした。☆は半分が選べないから3だけど、3.5くらいです。

これは、主人公の男女がどちらもちゃんとしたミュージシャンなんですね。それを知ってたらもっと違ったかな?素人だと思いこんで見たから、へーうまいじゃん、くらいの上から目線になっちゃったのかも知れない。(すいません^^;)ただ、歌詞もメロディもちょっと私には甘すぎ&ウェットすぎで・・・特に最初の数曲は。レコーディングスタジオに入ってからのナンバーは、とてもよかったです。

でも、プロのミュージシャンと知らなかったから、女の子の方は特に「チェコから出稼ぎに来てる」感じがリアルに見えてよかったかも知れない。あの、最初の出会いの、ぶしつけでしつっこい感じも、こういう子いるいる!って思って笑えた。ステレオタイプな言い方ですけど、東欧ってヨーロッパの田舎=洗練されてない、っていうイメージで、なんかこう、ズケズケ言いみたいな子多い気がする。
最初はちょっとうっとうしいなぁと思うんだけど、仲良くなると次第にそのキャラクターのいい面も見えてきて、銀行から融資を受ける時とスタジオを借りる時は特にそれが発揮される。
この子は言う事も直球なら、視線の投げ方も直球です。彼のギターと自分のピアノでセッションする時も、彼の演奏に合わせながらだから当たり前かも知れないけど、でもしきりに彼のほうを見る。それもじっくり見る。
洗練されてない、ぶしつけな、まっすぐな視線を投げるんです。それが印象的。
売れるかどうかも分からない彼の歌を、「すごくいい」と言い切ってしまう大胆さも、彼女らしい。ほんとかね、と思いながらも、信じてみたくなる。

レコーディングの休憩中に空き室でピアノを弾いて、彼女が彼の前で泣きだした時、おあつらえのロマンチックなシーンだったけど、何も起こらなかった・・・んですが、それがよかった。
あぁこういうとこは普通抱き合ってキスだよね、でもそうなるのかな、なんか違うけど、って思いながら見てたので、あぁやっぱりそうか、何も起こらないか、ってすごく納得。

2人は音楽ですごく共鳴しあってるんですが、ロンドンに発つまでの1週間のわずかな時間で、じゃあそこまで運命を感じてるかって言えばそこまでじゃない。それがよく表現されてました。でもお互い、いい人だなって思ってるのはよく伝わってきて。

最後、あのピアノを弾きながら、彼女が窓の外を眺めているシーンがよかった。
そんなあたたかな、素敵な気持ちを持ちながらピアノを弾く誰かが、あの何の変哲もないフラットの、どこかの窓にいるんだと思わせてくれる。

明日からまた電車に乗って、いくつもの生活の窓を眺めながら通勤していく私たちにも、ふと安らいだ気持ちをくれる、そういうエンディングでした。