『がらくた』江國香織

 

がらくた (新潮文庫)

がらくた (新潮文庫)

 

 通勤電車の中でやれることは限られているんですが、音楽を聴くか、携帯をいじるか、本を読むかっていうチョイスの中で、最近は本を読みたいモード。

そんなわけで、電車の中で、あまり頭を使わず、イライラもしないですらっと読める、そういう本として選びました。

江國香織さんは、すごく好きというほどでもないけど、なんというか音楽を聞き流すのに限りなく近くて、空白を埋めてくれて、邪魔もしないという感じの作風です。透明で空虚で、ベタベタしてこないとこも好きです。

アマゾンのレビューを読むと、あまり評判がよくないのですね。それも意外と常識的な批判というか、15歳の少女と40いくつの男性がそういう関係なんて気持ち悪いとか、結婚してるのに他人ともカジュアルな関係を持ったりして平然としているのが気持ち悪いとか。

私はそういうレビューのほうが不思議な感じでした。だって江國香織だよ?この人が書きたい世界って、常識とは何かっていうものでは絶対にない。むしろそういう小うるさいこと言わないから、私もイライラせずに読めてるわけで。15歳と40いくつだから何なんだ、と思います。それだけにラストシーンも想定内という感じで、全体的に何を言いたい話だったんだろ、とは思いましたが、気持ち悪いとかは全然なかったです。

私が興味深かったのは、原武男という男性。はら・たけおという名前がまず、江國香織の世界観に合わないな〜と。なんか選挙ポスターにありそうな名前。なんでこの名前にしたのかなあ。他の名前は柊子とかミミとか、ワタルくんとか、江國さんぽい名前なのに。

この男性が結婚してるのにあちこち寝ちらかすという、貞操観念のまったくない人なんですが、気持ち悪いとは感じないかわりに、この人はこれで幸せなのかな?と思いました。

成功の結婚って何なのか?が、この話の一つのテーマなのかなと思いました。結婚して、1人の異性だけを守り続けるなんて、自分の欲望に忠実になって考えればありえない、ということなのかと。でも結婚にも何かしらの真実が含まれていて、それも取りながら、なおかつ自分の欲望に嘘をつかず生きて行きたいとしたら、どのような形態をとりうるのか?みたいなことなのかと。

だとしたら、私は原武男が選択したやり方は、違うかなと思いました。結婚しても浮気する、それで配偶者が苦しむという要素にはあえて目をつぶったとしても、それでも、結婚して浮気する、という部分だけ切り取ってみてさえ、それでいいのかな?と思ってしまう。私はダメだなと思う。どうしてもそういうことする自分の中に矛盾を感じてしまいそう。私何してんだろ、と思いそう。それに、配偶者の気持ちも浮気相手の気持ちも、よほど無視しないとそんな関係は続けられない。別にいい人ぶるつもりもないけど、単に楽しくないだろうと思うのです。

この小説では原武男のことが好きすぎる妻・柊子さんの苦悩が縷々書かれているものの、原武男のほうの心の動きはほとんど書かれないので、彼が何を考えているのかは分からないままです。それがあったらもっと面白かったのかなと思います。