『新しい人生のはじめかた』

新しい人生のはじめかた [DVD]

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エマ・トンプソン大好きなんです。
この、ちょー色気ないところが(笑)
でもかしこくて、温かくて、さばさばしてて、それでいて、恋愛もしちゃいますけど何か?
みたいなとこがいい。
エマのラブシーンなんてほんと、見てるこっちが大丈夫かエマ!君にやれるのか!って心配になっちゃうくらいなんだけど、でもやりきっちゃうし、雰囲気も出せるところがさすがだ。

こういう映画を見てしみじみしてしまうあたり、私も老境に入ってきたか、と実感します。
若い頃見てたらピンとこないだろうな。やっぱり、恋愛とかそういうのは、基本的には若い人のものだからね。
ただ、年取ってから恋愛することに「もし」なれば、こんな恋愛はすてきだなと思います。

明日のお昼にここで、って言ったきり、携帯番号の交換もしないで別れてしまうのは、おおいにありえることだと思う。だって、今、ふたりは非日常の中にいるんですから。奇跡を信じたいんですから。携帯番号のやりとりなんてそんな、いやらしいほど現実的な連絡手段を持ち出したくないっていうナイーブな感情があってもおかしくないと思う。

ダスティン・ホフマン、名前だけは何度も聞きますがあまりちゃんと見た事なかったですが、さすがの存在感です。私、背が低い人好きなんですよね~。エマの方がよっぽど背が高いのに、それでもダスティンがエスコートしちゃうんです。舗道を2人で歩く時も、さりげに自分が車道側に回ってやる、自分のほうがちっこいのに!そのジェントルマンぶりがたまりません。

そして、ダスティンの図々しいほどの押しっぷり。
でもアメリカ人っぽいかも、って思わせちゃうんですよね。エマのように40代独身、人生半分諦めてます、みたいな女性にはこんくらい押さないと何も始まらないだろうという予感もあるので、やや強引すぎるダスティンのアプローチも許せてしまいます。
しかもダスティン、距離つめるつめる。
普通にエマと喋ってるだけなのに、やたら距離をつめてくるんですよね。意識的にパーソナルスペースを侵犯してくる。
あれは焦るなぁ。
こっちまでドキドキしてしまいました。

最後、せっかく戻って来た仕事を蹴ってエマに会いに行くダスティンを安易だと思う人もいるかも知れませんが、むしろ私は思い切ったな、と思いました。
確かに、今、失業状態であるダスティンが、何のコネもないロンドンにやってきて仕事が見つかる可能性は読めないし、持病もあるし、不安要因は山ほどある。
NYに戻れば仕事はとりあえずあるわけですから。
だけどいみじくも彼が
「これが幸せになるラストチャンスだ」
と言ったように、幸せに絶対なれるという保証はないにせよ、もしなれるとしたら、チャンスはもうここしかない。
それは正しい認識だと思う。
そう思った瞬間には、人間は、跳ばなきゃならんのです。
それまでどんなに平坦で、つまらない、灰色の毎日を送ってたとしても。
幸運の女神に後ろ髪はないんですもん。

人間、お金があり、健康であれば、安泰な老後を送れるだろうし、それが人生の最大の価値であると思う人は、そういう生き方をしたらいい。
でも、感情が動くのって、私はとても素敵なことだし、それこそが生きている実感だと思う。
どれだけ感情を揺さぶられたか、そして誰かの感情を揺さぶったか。
そのどっちもが素晴らしい。
だからラストシーンの2人の選択は、私はとっても賛成。

エマ・ポイントで5点満点。