『ぼくの大切なともだち』

ぼくの大切なともだち (完全受注5,000本限定生産) [DVD]

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これもよかった。「スモーク」「迷子の警察音楽隊」と並んで、買ってもいいと思えた作品。

フランス映画らしく、登場人物のファッションがお洒落でステキ。ブランドものとかではなく、形や色であか抜けた感じを出してる感じはさすがです。そしてフランスものにしては、ちゃんと起承転結があり、ほんのりハッピーエンディングでストーリーが分かりやすい。




みんなから「お前に友だちなんかいない」と言われ、売り言葉に買い言葉で10日以内に友だちを連れて来るという賭けをさせられる主人公。フランソワだったかな。
この映画のひじょうに面白いのが、フランソワが
「そんな嫌なヤツかなぁ?」
と思えるような人物であること。
多少即物的で、人の気持ちを忖度することが下手かも知れないけど、「お前が死んだって葬式には誰も来ない」とか、そこまでヒドイこと言われるほど人格に欠陥があると思えないのだ。
事実商売(古美術商)はまぁまぁ上手くやっているし、それなりに愛想もあり、洋服の趣味もよく、恋人だっている。この恋人がまた、いい人なんだ。押し付けがましくなく、優しくて。フランソワの財産目当てとか、そういうのでは全くない。

恋人を作るより、友だちを作る方が難しいということなのかな。
それとも、恋人と友だちでは売るものが違うということなんだろうか。
恋人には異性としての魅力。友だちには、人間としての魅力。そんなことかな。

そして、彼に友だちの作り方を指南する役目のブルーノがまた、
「この人、そんなに友だち作り上手いかなぁ?」
と思えるような人物なのだ。
確かに気さくに誰とも話すが、やたらと喋りすぎる。べちゃべちゃ引っ付かれるのは苦手だという人も絶対いるだろうし、そういう人からは嫌われるんじゃないだろうか。

しかし一方で、万人に好かれる人なんているんだろうかという疑問も成り立つ。一部の人からしっかりと好かれれば、十分合格ということなのかも知れない。

つまりこれは、ガリガリ亡者が聖人から手ほどきを受けるみたいな、分かりやすい図式の話ではないのだ。

よくよく話を追っていくと、ブルーノにしても、彼なりの苦悩を抱えていることがわかる。
それでもブルーノは、「僕ら、友だちだろう?」というフランソワの言う事を信じようとするのだが、それが彼の自信ではなく、弱さから来ているから、はらはらもするし、痛々しくもある。友情とは、確かに、そんなに簡単に作りおおせるものではないのだ、と実感させられる。フランソワの側からも、ブルーノの側からも。

そういう、決して完璧でない2人が、ぶつかりながら彼ら独自の友情を育んでいくところは見応えがある。彼らはそれを友情と呼ばないかも知れないけれど、もう呼び名なんてどうでもいいようなつながりを、最後に見いだしていく。それがとっても清々しいのだ。