ベンジャミン・バトンを読んでみた

ベンジャミン・バトン  数奇な人生 (角川文庫)

ベンジャミン・バトン 数奇な人生 (角川文庫)

S.フィッツジェラルドが書いた原作をネットで見つけたので、読んでみました。

びっくり。原作と映画はまったく違います。
ベンジャミン・バトンという人物が、老人として生まれて赤ん坊として死ぬという部分以外は、まったく別モノ。バトン家はボタンの会社じゃないし、デイジーなんか全然いないし、だいたい、原作では生みの親に引き取られて育てられています。ベンジャミンはあごヒゲがそよぐほどの、立派な老人として生まれているし。笑
だから、原作はあくまでインスパイアされたというだけのものみたいでしたね。

インスパイアっていうか、歌にアンサーソングがあるように、原作に対するアンサーストーリーみたいなものかなと思います。原作はテーマがもう少し明確で、周囲から「人並み」を押しつけられ、常に不自由で不適合な思いをしながら生きていく主人公が描かれます。当然愛されることはないし、幸せな結婚はするものの、その愛情も長続きしない。自分が若返り、戦争で目覚ましい働きをし、かつてその若さを崇めていた妻が老いて行くのを見る過程では優越感を感じるけれど、すぐに幼児化していって、また周囲から蔑まれる存在になる。原作のベンジャミンは、愛していないし、愛されてもいないのです。

でも映画では、愛があふれていた。ナイーブな解釈かも知れないし、ハリウッド的に話を広げ過ぎかも知れないけど、私は、「人間というのはもっとふところが深くていいんだ」っていうメッセージに見えました。フィッツジェラルドに対しても、「世の中をそんなに冷たいところだと思わなくていいんじゃないか」っていう、監督の問いかけみたいに思えたりして。