『プリーズ、ジーヴス』
- 作者: 勝田文,P.G.Wodehouse,森村たまき
- 出版社/メーカー: 白泉社
- 発売日: 2009/03/05
- メディア: コミック
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英国ものが好きなので、これも題材としては超どストライクなんだけど、執事ブームに乗っかった感じがかなり怪しい…と思いつつ、時間つぶしが欲しかったので買ってみた。
でもつまんなかった。原作もそんなに面白そうではなかったけど、本国イギリスではファンクラブもあるようで、それなりに人気なのかもしれない。テレビ化もされてたみたい。そこまでお茶の間に浸透してた作品なのにこれまでに1回も聞いたことなかったとは。
このマンガがつまなんないのは、この漫画家さんがこの作品にも、古き良きイギリスにも全く思い入れがないとこにあると思う。雇われ店長ならぬ雇われ漫画家みたいなものだ。たぶん、どっかからこの作品の漫画化の話がふってきて、じゃあやってみましょうかっていうことで始めたんだろう。
きっと真面目な人なんだろう、取材をしたロンドンのあちこちの場所を忠実に随所にちりばめて描いているんだが、どれもがいかにも唐突だ。しかもバーリントンアーケードとか、いかにも取材旅行で写真とってきたやつですっていうのがやたらに分かってしまう。バーリントンアーケード自体は確かに当時からあったかも知れないが、当時の建物を描いているように見えない。作品も古き良きイギリスも全く自分のものになっていない。
やっぱり坂田靖子の方がよかったな。
だけど、坂田靖子の世界は読んでいる人間を彼女の創り出す19世紀末のロンドンに強引に連れて行くパワーを持っている。
それは、この人が英国がとても好きで(たぶん)、彼の国について自分の興味で見聞きしたいろんなもの、いろんな書物、いろんな経験を、全部混ぜてごっくんと呑み込んで、完全に自分のものにしてから、初めてペンに乗せるからだ。
それに比べるとこちらは、何もかも中途半端という感じが否めない。
主人公がおばかさんっていうのも、もう、なんだかな。
たとえばウォレスとグルミットのウォレスもおばかさんだけど、ああいう、愛すべき間抜けっぷりというのとなんか違うよな。オックスブリッジを出てあんなに巡りが遅いのはどうかしてる。
だいたいが、主人公が愛すべきおばかさんっていうのも、もう食傷気味なんじゃないか。
19世紀末のイギリスガイド☆みたいなんがエピソードの間にはさんであるんで、あまりイギリス詳しくない人がターゲットなのかも知れない。
って別に私もイギリス博士じゃないけども、今更アフタヌーンティの話とか聞きたくないんだよ。
個人的には、バジル氏から20年以上経って、よりもよって同じ白泉社から、こんなもんが出るのかねえと思うとなんとも悔しい。まぁ、それこそどうだっていいんだろうけども。