『わたしに運命の恋なんてありえないって思ってた』

 

 何を隠そう、ロマコメ大好きである。好みのタイプのロマコメに出会うと、サルのように繰り返して見る。とは言え、好みのロマコメにお目にかかることはそうそうない。下手なロマコメは砂を吐きそうになる。

『わたしに運命の恋なんてありえないって思ってた』はよかった。関テレ作で去年のクリスマスにスペシャルドラマとして放映されたらしい。裏が逃げ恥の最終回だったらしくほとんどその時話題にならなかったが、もし知っていたらこの配役なら、とにかく見たと思う。

多部未華子高橋一生という演技上手な二人。どちらも、とびきり美形というタイプじゃないところがまたいい。一般人っぽさが出て、親近感がわく。例えば同じ脚本を、佐々木希ちゃんとディーン・フジオカがやったらどうだろう。全然違ったテイストになっただろうし、自分は多分見ていない。

とにかくこの二人は、細かいところまで上手いのだ。一つ一つの表情が自然で、もしかして地でやってるのかな?と思わせつつ、決してそうではない。自分の素地を使いながら、うまくそれを加工しているという感じ。匠の技を鑑賞している気分になってご飯何杯でもイケる。GYAOでレンタル視聴したのだが、2日で多分10回以上みた。それだけで飽き足らず再レンタルまでした。

脚本もいい(大島里美)。所々、ベタすぎる痛すぎるセリフの羅列のシーンになるが、この2人がやると知って書き下ろされているとすれば確信犯だろう。「東京とラブの真ん中で」とか、「徳川15将軍ラブ幕府」とか、小ネタもいい。「Bocci de Xmas」なんか、本当にあればいいと思う。あるのかなあ。なんちゃってイタリア語っぽく作られててセンスもいいと思う。それから黒川(高橋一生)の経営するIT会社の名前、Timeisは特にいい名前だと思った。

黒川社長は父子家庭で育って、父親は運送会社をやっていた。毎日ドライバーのシフトを組むのに膨大な時間がかかって苦労しているのを見て、シフト組みを自動でやってくれうアプリを高校生の時開発したというのが、彼のキャリアの始まりだというふうに語られる。

つまり、時間を節約して、限られた1日の時間を他の豊かな過ごし方に使いましょうというのがコンセプトな訳で、Time is moneyを短くしたのがこの社名。(脚本家さんに聞いた訳じゃないがきっとそう)

彼のお父さんへの気持ちとか、仕事への夢とか、色々詰まったいい社名だと思う。

莉子(多部未華子)はシラノ・ド・ベルジュラックにあやかって「白野」なんだね。自分も好きなのに人の恋を助けてしまうというところが同じ。リリック白野だから莉子かな。そして主人公が「白」野さんだから相手役が「黒」川で、脇役に「桃」瀬さんと「緑」谷くん。全部色が入っていて、初めのうちは着ている服もそれぞれ自分の色の服を着ている。途中からどうでもよくなってきてるけど(まあ、1色で回すのは難しいわな)

ゲームキャラの声を当ててるのは多分本当の声優さんだろうね。今の声優さんに詳しくないので、そこの遊びが分からなかったのは残念。多分キャラデザインをしてるのもちゃんとしたアニメーターさんなんだろう。何人か入ってたみたいだよね、タッチの違う絵が次々出てきて。

メインの恋愛模様以外に、そういう遊びがふんだんに入っている。だからなんども見られて、毎回楽しいのだと思う。

それからキーワードとして出てくる「ふがいない」。頼りにならない男性に対して「ふがいない」を連発するのだが、ふがいないってちょっと古い言葉で、可愛いよね。最近は鋭く尖った言葉が溢れてるので、「ふがいない」という言葉にはなんか、あったかみを感じた。責めてるんだけど、愛情があると言うかね。

同窓会シーンはお約束のキュンキュンで、ラストシーンはあの小っ恥ずかしいシナリオをよくここまで仕上げたな!という主演のお二人に拍手。釣堀のシーンもいい。個人的に気に入っているのは満喫で二人でDVDを見ているシーン。莉子は「酔っ払っておんぶした男女は、必ず結ばれます」と言ったが、それを真似れば、満喫でオールして恋愛ドラマを1クール分一緒に見た男女も、かなりの確率で結ばれるんじゃないかという気がする。