『人生フルーツ』

映画『人生フルーツ』公式サイト

逗子のCinema Amigoで鑑賞。この映画館は初めて行ったんだけど、満席になることは年に数回しかないとサイトに書いてあったので安心してギリギリに行ったら、まさかの満席だった。(座れたけど)

年に数回に当たったのか。

この映画、元建築家の90歳の津端修一氏と妻で87歳の英子さんの半自給自足生活を追ったドキュメンタリー。映画の途中にご不幸があることもあり、のんびりした中にも静かな悲しみと、また小さな救いが描かれるいい作品になっている。

ネット上の映画レビューなんかでは評価が高くて、さもありなんと言うところだけど、もちろん楽しまなかった人もいる。結構な年金額をもらってるじゃないかとか(月23万て言ったっけ?)、自給自足じゃないじゃないかとか(畑もあるけど、普通にスーパーで野菜買うし)、まあそんな意見が多かった。

東大出ていくつも団地を設計して、そのほとんどが経済とのせめぎ合いで不本意な結果に終わったとしても、いまだに講演にも呼ばれるし、奥さんはいい人で夫唱婦随を絵に描いたようだし、「人は、土を離れては生きられないのよ!」的な思想は文句のつけようがなく真っ当だし、何もかも正しすぎて、ある種の人たちは息苦しさを感じるのかもしれない。かわゆいシータが言うなら受け入れもするが、自分ちのご近所にもいそうなお年寄りに言われるとイラっとするとかね。

そういう人には、あれはきれいすぎるドキュメンタリーに見えたのだろう。ただ、個人的にはそう感じなかった。ご主人はかなり頑固者だと思ったし、奥さんも厳しい人かも知れないと思った。仲間としてはいいけれど、対立すると歩み寄ることのできない、難しい人たちかも知れない。あの半自給自足生活も、一面の真理に支えられているだけで、そりゃ揚げ足を取ろうと思えば色々に取れる。だからあれを、聖人君子が提唱する理想郷がテーマのドキュメンタリーと捉えると多分違っていて、制作側もそんなことを意図して作っていないと感じた。あれは頑固者が頑固を貫いた生活をして、そこにたまたま全面的に協力してくれる奥さんがいたという、ちょっとしたメルヘンの話なのだと思う。

自分はああ言うご夫婦がこの世界のどこかにいることを知れてなんとなく嬉しかった。あのご夫婦は、自分たちと違う暮らしを楽しむ誰かがいたとしても、それを責める気なんかないだろう。自分たちの望む暮らしをただ追求していただけだし、そもそも他人の生活に興味なんかなさそうだ。こちらとしては、たとえ自分が乱脈な生活をしていようとも、ああいうご夫婦がどこかにいて、人類全体の点数を上げてくれてると思えば、有難いくらいだった。とは言え、あの暮らしを見習う気はそれほどないんだけれども。

あと、東海テレビのドキュメンタリーって全部見てみたいなあ。随所に巧さを感じた。押し付けがましくないのがいい。ナレーションも最小限で、見る側に委ねている。

大好きだった「深夜特急」も東海テレビ制作じゃなかったかな。と思って調べたら名古屋テレビだった。東海テレビ名古屋テレビ・・・違うよね。(中部地方の皆さんすみません)


心温まる夫婦のドキュメンタリー!映画『人生フルーツ』予告編