文章

そらを見る子ども

年を取ると、人の話も、すごくよく聞く場合と、聞くふりしてほとんど聞いていない場合に分かれて来る。というか、多くの人の話は、後者のパターンになってしまっている気もする。耳にはじかれるのである。それは、自分の頭が凝り固まってしまっているせいな…

かわいそうなあの子

世間というのは、ほんとに悪趣味なことをやらせるなと思った。 街ですれ違う分には、ごくフツーの人達に見えるのにね。 私がお菓子屋さんの店長で、あの子が買いに来たら、袋に甘いミルクチョコレートを一枚、オマケでそっと入れてあげる。 口に含んで、一瞬…

寂しいポケット

その子が出勤していないことに気付いたのは今日が初めてだった。ずっと、工場の方へ研修に出ていると聞いていたんだけど、研修が終わった後も本社に顔を出していないそうだ。もうかれこれ2週間。最初の日だけ、「休みます」というメールが来たらしいが、そ…

サミュエル・ジョンソン

…大体、この人の名前とサミュエル・L・ジャクソンがいつも一緒になっちゃう45ですが、サミュエル・ジョンソンはイギリスの文学者のほうです。「ロンドンに飽きた人は、人生に飽きた人だ」という、有名な警句を残しております。私はロンドン住んでたし、好き…

夜にかけて春一番が

夕食時くらいに生暖かい風が吹いて、私は昔を思い出す。まだ外国に行ったこともなくて、山の裏側に何があるかも知らなかった頃。私の中に今よりいっぱい水があって、こんな風が吹くとゆらゆら揺れていたよ。

さかさかさか

私の田舎で雪がふります。雪の音はさかさか。夜はしんしん。みんなが寝静まっている間を盗むように雪がふります。昼間の騒ぎが嘘のよう。最近「ごめんね」って言うこと増えました。人間、どうでもいいことには割と素直に謝るが、ほんとに謝らなきゃいけない…